うつろう景色と、日常

これは、とある七五三の打ち合わせの中で、ママがふと話してくれた言葉から生まれた一枚です。

「パパが小さい頃は、このあたり真っ暗で怖かったんだって。でも最近、高速道路ができて……ちょっと寂しいんだよね。」

普段あまり多くを語らないというパパの気持ちを、ママがそっと教えてくれたその瞬間がとても印象に残っています。
言葉にしなくても、家族の中で大切に受け継がれていく記憶や感情。
そのやりとりがとても温かく、胸に残りました。

パパにとっては、変わってしまった風景。
けれど、今この場所で育っている子どもたちにとっては、この高速道路も、そこから見える景色も、“はじめから在るもの”。

便利になったぶん、懐かしいものが静かに後ろへ流れていく。
だけど、それもまた日常の積み重ねであり、風景の中に息づく物語。

「寂しさ」と「便利さ」、その両方を抱えたままこの場所で暮らしていく家族の時間。
その重なりが、この景色を愛おしく見せてくれました。

風景が日常になる前に。
記憶とともに、今をそっと写しとめておきたくて、シャッターを切りました。